- 「自由保育」とはこういうもの
- 子供にとってのメリットは~
- 実践する時はここに注意!
勉強熱心な人ほど明確な答えを持っているもの。
その「自由保育」について、今回は一歩踏み込んで考えます。
最大のポイントにして見落とされがちな「一心同体感」についても詳述。
最後まで読み自分なりにまとめておけば、保育力が底上げされ、さらに就職先選びも捗ること間違いなし!
「自由保育」はバランス?
ところで「自由保育」って何でしょう?
難しい質問ではありません。あなたもきっと「自由保育」を自分なりに説明できるはず。
よく言われる特徴を並べると、おそらく以下のようになると思います。
- 一斉保育・設定保育の反対
- 何をするかは子供が主体的に決める
- かといって放っておくのではない
- 保育者は手出し・口出ししない
- 提案する時も子供の考えを尊重
本人の主体性を大切にしつつ、友達、さらには保育者(先生)の考えをバランスよくプラスし、充実した遊びを深めていく保育。
といった感じでしょうか。
「自由保育」はデメリットも大きい?
「自由保育」には賛否両論あるようです。良いところも悪いところもあると。
「自由保育」のデメリットとして挙げられるのは
- 子供同士のトラブルが増える
- 協調性が育たない
- 苦手なことをしなくなる
- (好きなことばかりする)
など。
インターネット検索すると、このような意見がたくさん見つかります。
※多くが転職支援会社により書かれたもの
また、専門家の間でも同様。
例えば、教育評論家の尾木直樹氏は以下の点を指摘しています。
(要約)
「自由保育」が大きく動き出したのは1990年代。そして「学級崩壊」が顕著になってきたのが1990年代半ば以降。
自由保育が低学年における学級崩壊の引き金になったと考えられるのではないか。
『「学級崩壊」をどうみるか』(NHKブックス, 1999)
先ほど見たように、多くの人が考える「自由保育」は、子供と大人の意図の「バランス」で成り立っています。
「バランス」が崩れ、「デメリット」が大きくなると、小学校低学年での学級崩壊(小1プロブレム)さえ引き起こしてしまう…
「自由保育にはデメリットもある」とする人は、このことを心配しているようです。
よくある「自由保育」はニセモノ!?
「自由保育」は本当に子供の協調性を育まないのでしょうか?
苦手なことに挑戦する気持ちを奪うのでしょうか?
つまり、デメリットの方が大きいのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。
教育学者の井深雄二氏も論文の中で取り上げています。
ここで自由保育というのは、一斉保育を対立概念とする保育思想で、しばしば1989年1989年改訂幼稚園教育要領・ 1990年改訂保育指針の理念と受け取られている。
しかし、自由保育を倉橋惣三の「誘導保育」を発展させた保育思想と理解した場合には、その自由保育思想が幼稚園教育要領等に採用されたとまでは言えない(後略)
※「『学級崩壊』をめぐる諸問題」(名古屋工業大学, 2000)
誤解を恐れず、簡単に言い換えましょう。
現在の一斉保育は本来の理念とかけ離れています。
「誤った自由保育」は確かに大きなデメリットを内包しており、小学校の学級崩壊にも結び付くかもしれません。
しかし、「日本の幼児教育の父」と呼ばれた倉橋惣三の志した保育には、上記のようなデメリットは皆無。
学び実践すべきは、そんな「本当の自由保育」です。
目の前の偽物とはまったく別物なのです。
「本当の自由保育」って?
「誤った自由保育」は幼児の心理発達に悪影響を与えかねません。
反対に、「本当の自由保育」は幼児をうんと伸ばします。
「本当の自由保育」の本質は、目的地を思い描き、柔軟に軌道修正し続けること。
以下で、ポイントごとに確認していきましょう。
自由保育のポイント①目的地を思い描く
「目的地」とは、つまり「遊びの目的地」のこと。
平たく言い換えれば「見通し」です。
子供の視点でいうなら「こうやって遊ぼう!という思い」。
「本当の自由保育」では、子供自身が目的地を(言葉にできないにしても)イメージしていることが重要です。
心に目的地があることで、自由保育は本物になります。
反対に、「目的地」のない保育はどうなるか?
どんなにエネルギーに満ちていても、「こうやって遊ぼう!という思い」がなければ、例えば「ふざける」生活になるでしょう。
「ふざける」だけの日常は「自由保育」でも何でもありませんよね。
「本当の自由保育」には目的地、つまり「こうやって遊ぼう!という思い」が欠かせないのです。
自由保育のポイント②柔軟に軌道修正する
しかし、心配事も湧いてきませんか?
「目的地を見失ってしまう」という心配です。
「目的地を見失ってしまう」とは、先ほどのように言い換えるなら、「こうやって遊ぼう!という思いがすぐに消えてしまう」状態。
目的地がすぐに失われてしまうことは、子供の心理発達にとってよくありません。
必要なのは「軌道修正」。
迷走・逆走しそうになる子供の思いを、保育者が一緒になって「目的地」へと向け直すわけです。
年齢が小さいほど、このような姿が見られるもの。
ある遊びに心から満足して次の遊びに移るのであれば、もちろん問題ありません。
しかし、まったく遊び込むようすもなく手当たり次第にこちらからあちらへ、というのでは果たすべき心理発達は実現しません。
遊びがつまらなくなる前に、保育者が動きましょう。提案しましょう。
「○○するともっと楽しいかもしれないよ!」と行動で伝えるのです。
※「提案」の方法は奥深いです。解説コンテンツを企画中です
「軌道修正」は、「本当の自由保育」のために外せない要素です。
自由保育のポイント③継続
この世で最高の保育者がいるとします。
その先生は毎日「目的地を思い描く援助」と「柔軟な軌道修正」を意識し、最高の保育をしています。
しかし、6月に体調を崩し、休職することになってしまいました。
後を引き継いだのは、言い方は悪いですが、「誤った自由保育」が大好きな先生。
園児を放任しておきながら「自由に遊ばせ、見守っている」と主張しています。
子供達は、製作で難しい部分があるたびに投げ出し、遊びが終わってしまいます。
またある時はケンカで手が出ます。
しかし、この後任の先生は「見守る」ばかりで何もしません・何も言いません。
そうやって残りの10か月が経過しました。
さて、子供達は順調に心理発達を遂げたでしょうか?
おそらく厳しいでしょう。
なぜなら「継続」していないからです。
スポーツでも英会話でも同じですが、「継続」なしには身につきません。
「週に2日やればいい」というマインドでは、「本当の自由保育」は実現不可能。
幼児期を通して「継続」してこそ効果が表れるのです。
まとめ+保育実習や就職に向けて
現在広く行われている「自由保育」は、本来の理念を失ったニセモノである可能性が高い。
「本当の自由保育」には不可欠のポイントが3つある。
そんな内容でしたね。
複雑な話だと感じるかもしれませんが、大丈夫!
保育するうちにわかってくるはずですし、逆に、仕事として保育に打ち込んでいない学生のうちはわからなくて当然です。
ただ、知識としてまとめ、保育実習や就職に活用してほしいです。
つまり、「本当の自由保育」が行われているかどうかを見極めた上で実習先や就職先を選ぼう、ということ。