母親と幼稚園

乾風吹きすさぶ 幼稚園の朝。

「今日はお部屋で遊びましょう」と 先生。

こんな日は 肩を寄せ合うわらべうた。

♪おせんべいがやけた がピッタリだ。

どのおせんべいが やけたかな

あらら、こまさんも おせんべいが食べたい。

お外は風が暴れまわっているけれど

山さんたちのお部屋は和やかだ。

♪工事場 も始まった。

製作も 始まりそうだ。

森さんたちも ♪工事場だ。

今日も誕生会の続きなのだ。

お庭が大好きな 小さい人たちも

お部屋で楽しくおもしろく

遊ぶことができるように なってきた。

同じお部屋で

違う遊びが繰り広げられることの 良さ。

入園前の我が子の姿と 今の姿は

ずいぶん違っていることだろう。

「うちの子は 外遊びが好き」

「うちの子は お部屋遊びばかり」

「うちの子は 電車にしか興味がなくて」

「うちの子は 子どもより大人が好き」

お母様のご心配をよそに

我が子は自ら 感じ考え、自分自身を広げていく。

だって 自分以外の子どもたちが

いろいろな遊びを思いついたり 工夫するのを

目の当たりにするのだもの。

保育者たちが 子どもたちの思いつきや考えを

形に表す手助けを してくれるのだもの。

幼稚園選びのお母様が よくおっしゃる マチガイ。

「自由に遊んでいると 片寄らないですか?」

「好きなことばかりやって 苦手なことはやらなくなるでしょう?」

「伸び伸び遊ぶのがいいのはわかるけれど いろんな経験もさせたいし」

母親たちは我が子の力を過小評価しているようだ。

幼児には 持って生まれた力があるのに

その力を使わせないで

自分の力の上に 知識を上乗せすることばかり 考えているのだ。

幼児は好きなことばかりしないし いつだって高みを目指す存在なのに

やらせないと カシコクならないからと

心のどこかで 不安に思っているのだろう。

“いろんな経験”というけれど

一斉保育で大人から与えられる 受け身の経験では

意欲も意志も 育たない。

自分の力の上に ただ乗っけてあるだけの

頭でっかちの 付け焼刃に過ぎない。

持って生まれた自分の力が 奮い立つような

生活をしなければ

子どもの頭も 子どもの身体も

まんべんなく育たない。

小さい幼児が安定して 自分の力を発揮する

そのためには

お母様と幼稚園が

仲良く 手を取り合うことが肝心。

幼稚園にいながら

お母様を味わうことのできる

お弁当は すばらしい。

よそ行きの すてきなお弁当より

素朴な いつものお弁当が

子どもには 一番嬉しい。

いつものお母様が 大好きなのだから。

よそ行きでない いつものお母様と

よそ行きでない いつもの保育者が

信頼しあい

力を合わせると どうなるか。

いつの間にか 知らずしらず

子どもの力がこんなに育っていた!と

驚くような生活が

園でも家庭でも 繰り広げられるのだ。

なんと嬉しいことだろう ーーー!