考える力の育て方

幼児教育というと世間では

あるいは いわゆる専門家が

頭の柔らかい幼児に与える

早期教育の効能を並べる。

母たちは 我が子の将来のため

自分の安心のため

通信教育などの “いわゆる教育的なこと”を

良かれと思い やらせてみる。

良かれと思い おすすめの

子育て本に書いてあった

興味や関心の育て方も 試してみたりする。


そこには必ず書いてある。


子どもの問いには必ず丁寧に答えましょうと。

億劫がらずに と。

億劫がらず 心をゆき届かせることは


もちろん 大切なことなのだけれど。

問われたら必ず 答えを教えていたら

幼児の頭はどうなるか。


知識は増えるが

自分の頭で考えなくなる。


聞けばなんでもママが答えてくれるのだから。


子どもがどんどん覚えるとママは嬉しいから

ママはますます教えたくなるーーー。


いわゆる 早期教育の知識と

お母様のたくさんの言葉で


幼児の頭は 常に受け身だ。

そしてそのうち 友達と遊ぶことが難しくなる。


自分の持っている知識を

披露することだけが 遊びになるからだ。



周囲の大人たちは すごいと褒めそやすが

やがて 大人相手にしゃべってばかりの子ども

つまらなくなると大人に質問して 退屈を紛らす子どもが

気がかりになってくる。



幼児は 感じるから次に考える。

考えるから そのうち判断できるようになるのだが

自ら感じること 心を動かすということが難しい。


そういう子どもにとって

子どもの世界で友達と遊ぶことは難しい。

こういう子どもを 子どもに戻すのに

半年も一年もかかる。


砂場での教育実習生のマチガイ。

「どうして砂場に土を入れちゃいけないの?」
と5歳児。

「かたまっちゃうからよ」。
(ああ、教えちゃった!)

子どもの頭を「ああ、ハイハイ」の受け身にしてしまった

実習生の反省。

自分で自分に こう言ってみたら良かったのでは。

「え?どうしてかしら?」
と本気で考えてみたら良かったのでは。

大人も自分の中身を動かすのだ。

土と砂で硬いお団子を作る子どもたちなのだから

そのうち自分で「あ、そうか!」と気づく。

「かたまっちゃうからだ!」と。

先へ先へ教えていると 自ら考えるチャンスを無にする。


3歳は3歳の

4歳は4歳の

5歳は5歳の子どもの世界の

その時の力を 精一杯使わせなければ

幼児は育たない。


外側だけの付け焼刃は

将来の力になりえない。



幼児の教育は特別なことでなく

あたりまえの日常生活に存在する。

あたりまえの日常を細やかに

億劫がらず心をゆき届かせるのが

幼児の教育だーーー。