節分の朝。
走る子ども。
子どもの世界は
きっと もう
とっくに立春を
迎えているのだ。
走りたい、
走りたい、
走りたい
子どもたち。
小さな春を見つけた
子ども。
「ムラサキだ」
「ちいちゃい赤ちゃんだ」。
キリンさんにもごあいさつ。
家族ごっこの海さんたち。
おまわりさんと忍者がいる家族
なんて、めったにない。
いいなぁ!
「ねぇ、おじいさんになって」
「まだ若いおじいさん」
「29さい」
「えー、59さいがいいよ。
それならやってあげる」
「じゃあ おじいさんっていうことね」
「ぼく、おじいちゃん大好きなんだ」
「ぼくも。おばあちゃんも大好きだよ」
「お母さんも、お父さんも大好き」
「決まってるよ」。
幸せな子どもたち。
遊びの後の砂場。
おまわりさんは 何やら採集している。
ぴざやさん移転。
ガソリンは あまり売れないらしい。
作りものに忙しい
海さんたち。
こんなに
こんなに、
こんなに
こんなに
作ったのに、
もっといいことを
思いつくのだ。
川さんたちは
具合が悪い。
だから救急車を呼んだ。
早く病院に行かなくては。
お家では、お父さんとお兄さんが
赤ちゃんのお世話をしながら
お留守番。
海さんも
川さんも
池さんも、
鬼のことなんか
すっかり忘れて、
うっかり夢中になっている。
うっかりしているところが
子どものいいところだ。
お弁当をしっかり食べて、
力をつけて、
さあ、豆まきの準備だ。
静まりかえる
池の組。
あら?
鬼さんがやってきた!
おにはーそと!
おにはーそと!
あ!こっちにやってきた!
「悪い子いる?」
「わるいこはいませーん!」。
助けなくちゃ!
おにはーそと!
おにはーそと!
怖いけれどがんばる
池さんたち。
みんな
けっこう強い。
おにはーそと!
おにはーそと!
あれ?
なんだ、
鬼は先生だ。
安心したら
涙が出てきた。
さあ、もう一度!
おにはーそと!
おにはーそと!
先生だってわかっていても
やっぱり怖い
小さい人たち。
川さんたちは
勇ましい。
さっき練習していたものね。
あっ 大変!お友だちが!
こわいよぉ!
だいじょうぶ だいじょうぶ。
この鬼、先生だからね。
よーし!
おにはーそと!
おにはーそと!
あら?
やっぱり怖い。
先生だってわかっていても
怖いのだ。
いいお友だちがいて
よかったこと。
あら?
こっちでも。
気を取り直して、
はっけよい
のこった のこった!
次から次に
はっけよい。
みんな必死だ。
はっけよい
のこった!
はっけよい
のこった!
みんな強い!
強い!
強い!
強い
強い!
あら?
さっきはあんなに強かったのに。
鬼さんと握手の
池さんたち。
海さんたちの迫力。
おにはーそと!
おにはーそと!
おにはーそと!
去年より うんと強くなっている。
鬼は先生だ と
わかっているし…。
わかっていても
やっぱり怖い
鬼。
「ほらね、先生でしょ」って言われても、
やっぱり怖い
鬼。
おにはーそと!
おにはーそと!
おにはーそと!
おにはーそと!
おにはーそとー!
「あら、どうしたの?」
「もう豆がなくなっちゃったんだよ」
「ぼくの分けてあげるからね」
「ありがとう」。
今は小学4年生のふたちゃんが
置いていってくれた
この ほっこり鬼が
いい味を出していて
ありがたい。
「ああ おもしろかった!」
「またやりたいね!」
と 海さんたち。
来年の話をすると鬼が笑う
というけれど、
この鬼たちは笑えない。
だって、これが
海さんたちにとって
幼稚園最後の豆まきなんだもの。
明日は立春。
明るい春に向かって
思いきり生きよう―――!