母と子を繋ぐお弁当

春の日差しの園庭。

子どもたちの朝。

大好きなお友達と

大好きな幼稚園で遊ぶ幸せが 満ちる。

もうすぐ巣立つ 山さんたちには

最後の日まで 思いきり

幼児の今を 生きてほしい。

「もうすぐ卒園」と 口では言っているけれど

卒園の本当の意味は

きっと 誰もわかっていない。

ただただ 成長の喜びに輝いている。

物心ついた頃からずっと

幼稚園の子どもでいたから

今日も明日も明後日も

ずっとこうして遊べるような

そんな心持ちでいるに 違いない。

小さい人たちも

持って生まれた 自分の力を使って

一生懸命遊んでいる。

年長さんたちだって

ついこの前まで 小さい組の人たちだったのだ。

その頃 お母様たちは

幼児期が こんなに短いと

きっと 思っていなかった。

入園前の 幼稚園選びの頃

自分の作ったお弁当を

我が子が こんなに喜ぶなんて

きっと 思っていなかった。

今日は 最後のお弁当。

お母様一人ひとりが

心を込めた“お母さんの味”。

たくさん遊んで おなかがすいて

お弁当を広げると

いつも お母さんの顔が見える。

お弁当箱の上を 行ったり来たりする

お母さんの手が見える。

幼稚園にいながら

お母さんを味わえる

お弁当の すばらしさ。

遊び疲れた心や身体の隅々に

お母さんの味が 沁み込んで

元気復活。

熱心な遊びが また始まる。

子どもは 栄養素だけを摂取しているのではないのだ。

お母さんを味わっているのだなあ。

「高階幼稚園ってお弁当なの、古ーい!めんどくさーい!」

「なんで 給食にしないんだろうね」と

そういう声が 時々聞こえてくるが

何を言っとるか!

誰が作ったかワカラナイ給食を食べたとして

子どもはこんなにニコニコなどしない。

ただ栄養素を取り入れる。

給食を作ったおじさんおばさんを

味わったりなどしない。

子どもは食べることで世界を取り入れる と言われている。

この小さいお弁当箱の中は

母と子の 世界なのだ。

もうすぐ巣立つ この子どもたちは

お母さんのお弁当に支えられて

幼児の時代を 思いきり幸せに

生きることができたのだなあーーー!