お弁当と土



幼稚園を卒園し


何年も何年も時がたって



こんなに実った グレープフルーツ。


今はもう大人になった こうたろうくんも


お母さんのお弁当で育った 幼稚園児時代があった。


デザートのグレープフルーツの種を


幼稚園の土に埋めてみたら


いつの間にか 芽が出て


少しづつ伸びて


卒園するまでに 30㎝程の 幼い木に育った。



「これ 持って帰っていい?」


「「いいわよ、なったらちょうだいね」



そしてそのグレープフルーツの木は


伸びて伸びて 屋根の上まで伸びて


黄色いグレープフルーツの実を


50も60も実らせたのだ。



「なったらちょうだいね って ゆうこ先生が言ってたから」



届けてほしいと頼まれたとお母様。


あれからもう何年も届けられる


甘酸っぱいグレープフルーツ便。



こうたろうくんは 千葉県で結婚し、


お父さんになったとのこと。


こうたろうくん二世も


グレープフルーツの種を 埋めるのだろうか。




きっと豊かな幼児時代を 過ごしているに違いない。



幼稚園を卒園し


何年も何年も時が経って



届けられた 立派な陶器。


幼稚園児だった あのけんちゃんが焼いた


力強い作品だ。



幼稚園のお庭の 土や石や砂で


いろんなものを作っていた


小さかったけんちゃんが


今は窯元なのだ!



群馬県にある強戸釜(ごうどがま)で


あたたかく頼もしい器を焼く


お父さんなのだ。


けんちゃん二世も


土や石や砂で遊ぶのだろうか。


きっと豊かな幼児時代を


過ごしているに違いない。



こうたろうくん、けんいちくん


ありがとう!


こうたろうくんもけんいちくんも


お母さんのお弁当で育った。


幼稚園の土で育った。



二人はきっと


幼稚園時代のいろいろを



忘れてしまっているだろう。



けれど


思いきり遊んだ 幼児時代の自分が


今の自分を そして これからの自分をも


支え続けるのだ。ずっとずっと ーーー。