花曇りの幼稚園。
ムスカリが盛りを過ぎた。
ムスカリさんにも
次の季節がやってきたのだ。
子どもたちには
バーベキューの季節がやってきた。
今日は薪を燃やす練習。
ダンゴムシのお家を見つけた
子ども。
アブラムシのお家を見つけた
子ども。
テントウムシさんに食べさせるのだ。
昨日作った凧。
嬉しい凧。
思いきり走ると上がる 凧。
“思いきり”という言葉が
ピッタリな場面。
けれど、
子どもは どんな時も思いきり
身体の中を動かしている。
作るときも、
捕まえたダンゴムシを
見せ合うときも。
焼きいもにする石を
集めるときも。
本人もお友だちも、
“こうしよう”と考えながら
いっしょうけんめいだ。
変身用のリボンを
切ってもらうときも。
先生の手をじっと見つめる
子どもの中身は、
思いきり動いている。
あ、
遊んだ後の粘土を
自分でしまって、えらいこと。
嬉しい先生。
先生の身体の中も
今、思いきり動いている。
お手々も上手に洗っている。
お母さまとの日常を感じ、
心が温かくなる先生。
「上手に洗ってえらいわね」。
先生の声に、お姉さんがやってくる。
「ほんとに上手」。褒められて嬉しい子ども。
身体の中身が
思いきり動いている。
おかあさーん と涙の、
お池のひよこさん。
小さいお友だちのために
心を動かすお姉さんたち。
携帯電話を作る先生の
手元を見ているうちに、
身体の中身が動いてきて、
あっというまに
楽しくなってしまう子ども。
ここでも
ここでも
ここでも、
幼稚園中の子どもたちが
心と身体を動かしている。
外側だけ見ると
たわいなく思える、
子どもたちの
遊びの生活。
けれど、
その日常が
子どもたちの
心と身体を育てる。
子どもたちの中身が
思いきり動くような生活。
子どもたちが
思いついたり考えたりする、
子どもさながらの生活の その中に、
教育を入れていくのが、
私ども保育者だ。
教育されているなどと
子どもたちに気づかせないよう、
自然に、そっと 遊びの生活を
広げたり深めたりする。
それが幼稚園。
子どもだけでなく大人も
新しい自分になれるところ。
それが幼稚園だ―――。