最後のカレー幼稚園

水曜日の 諦念。

年長 山さんたちは 最後のカレー幼稚園。

幼児たちの生活には

始まりはあっても

終わりの実感などない。

けれど 大人たちは

終わっていく園生活の一つ毎に 思いを込める。

最高においしいカレーを 作ろうと。

山さんたちは

昨日作った鯉のぼりに 見守られながら

♪白雪姫 の劇ごっこ。

カレー 最終回のことなど

知ってか知らずか

熱中が 続いている。

森の組の 工事のおじさんたちは

横断歩道を描くと聞いて

見物に。

ガスで200度以上に熱しながらの 作業なのだ。

一生けんめいな 工事のおじさんを

真剣に見続ける 森さんたち。

高階幼稚園のヒーローは

昔から「工事のおじさん」なのだ。

思いを込めた

おいしいカレーが 出来上がり。

カレー屋さんは 森の組へ。

見つめる子どもたち。

おいしいにおいが漂って

早く食べたい 森さんたち。

「いただきます」

「フーフーフーフー!」

「おいしい!」

小さい人たちは

おいしいカレーを お口に入れるのに

一生けんめいなため

ほとんど 無言。

「おかわり!」という時には

大きな声を出す。

子どもたちのおいしいお顔を

味わうことができ

眼福を得る お料理サークル。

山の組にも カレー屋さんが。

大きい人たちが 親しんできた

あの たまらなくいい匂いが

お部屋中に漂う。

お当番の2人が

「いただきます サイコー!」

この サイコーポーズは

山さんたちの 感謝の思いが込められている。

おいしいカレー ありがとうと

カレー屋さんたちに 伝えたいのだ。

年長さんたちが 卒園しても

きっと 年中 山さんたちが

この「サイコー」を

受け継いでくれるに 違いない。

年長 山さんたちの カレー幼稚園は

今日で終わってしまうけれど

これからは この味が

一人ひとりの 思い出の味になっていくのだ。

忘れられない 思い出の味に。

幼稚園のカレー屋さんたちも

しみじみ嬉しいことだろう。

「おかわり このへんまで」

「多めでってことね」ーーー。